「2022年の中国の政治・外交の焦点と日本」
習近平は「社会主義現代化強国」を掲げ、中国共産党建党100周年にあたる2049年にアメリカに追いつく国家目標を明確にしている。鄧小平から胡錦濤にかけての時期には世界秩序を公正にするよう欧米に求めたのに対し、習近平は、自分たちで世界の新たな秩序をつくる姿勢を打ち出したことが特徴と言える。
習近平は党の領導を法治建設などを通じて制度的に一層強化し、自らは「党の核心」となり、権威を高めたい考えだ。「国家の安全」を優先させ、デジタルによる管理統制をさらに強めている。
経済政策としては、目下新型インフラ建設などを進めつつ富の再分配を重視する共同富裕を推進しようとする。
ただ、民間企業や社会への統制を強めても、優れた技術を持つ民間企業を国有化することは難しい。新型インフラの強化によって、これまで以上に地域の格差が広がる恐れがある。「“共同” 富裕」とあえて強調するのはそのためだ。他方、少数民族の自治区に対しては「貧困対策」という言葉を使いながら、地域の幼稚園で標準中国を使った教育を行うなど、同化政策を強化している。
強権政治で着々と政策を推進しているかに見える習近平だが、社会から地方の「不作為」(サボタージュ)などの反発も大きく、そう単純ではない。
2022年の中国の最大の関心事は習近平の任期延長問題に尽きる。後継者を指名していない以上、習近平が3期目を見据えていることは確実ではあるものの、慎重な対応が求めれるので、対外的に大きな動きが見られるのは来年以降になるだろう。
川島氏は、次期政権で習近平が総書記を継続、あるいは党主席を復活させる、李克強が序列3位となる可能性など、人事について予測。中国国内のコロナ対策は「習近平政権下で末端レベルまで統制を強化していたことが結果的に功を奏した」とされる、評した。また、ロシアのウクライナ侵攻で、中国は「ウクライナとも関係の深いもののロシア不支持を表明することも叶わず相当慎重にならざるを得ない」と語った。米中関係にも触れ、「デカップリングと言いながら、米中は協力を深めている面もあるのが実状。米国は対中協力を二国間で、厳しくあたるときに同盟国の協力を求める傾向があり、日本がそれを鵜呑みにして中国に厳しくあたるだけになるのは問題だ」と持論を述べた。